まだあなたが好きみたい
菜々子はちょっと面食らった。
なんとなくこういう流れになるのかなという予想はしていたが、まさかこうくるとはおもわなかった。
とりあえずネガティブなことを言ってまず相手をロックオンしたあと、そこからどうこちらの気持ちを盛り上げ引き付けてくれるのか、丹念に拵えた筋書きが待っているのだろうかと、期待したのに。
「だから、よかったらその、友だちから―――てか、友だちになってくれないかなぁって。それで、おれのことを少しずつでも知ってもらえたらなって……」
上目づかいに木野村は伺いを立てる。
菜々子は考える風に視線を足元に落とした。
本気なのかな。
人気者、というレッテルが頭をめぐる。
わかんない。
わたしは地味だもの。せめて中堅だとは主張したいけど、それだって、木野村とは立ってるステージがずいぶんちがう。彼だってわかってるはずだ。
それなのにわたしを好きだという。
友だちから始めたいという。
「どう、かな」
菜々子は窓の外へと目を転じた。