まだあなたが好きみたい
さんざんな言われようだった。
けれど、それというのはつまり、そう言われるだけのことをわたしが彼にしたからに他あるまい。
せっせと虚勢を張って、わたしよりも優位に立とうとわざとひどい言葉を言って足掻いているだけではきっとない。
……と、そんなわかったようなことを思い、言い返すこともままならず、己が行動を省みて落ち込む自分が、菜々子は腹立たしくてならなかった。
……結局、わたしは彼が好きなんだ。
だから、好きな気持ちがわたしを弱くするし、好かれたい気持ちがわたしを足踏みさせる。
わたしが悪いのだと思って受け容れた方が、心証が良くなるだろうというさもしい計算が働くのを止めることなんか出来なかった。
この期に及んで、とは自分でも思うけれど、彼の全身から放出された嫌悪を前に怯まないわけはなく、ましてや彼を追い落とすような物言いを続ける勇気などあるはずもない。
「……もう、いい」
菜々子はか細い声でそう言った。