まだあなたが好きみたい
「べつにってなんだよ。それじゃあ約束が履行されなくなっちまうだろうが」
「約束は守る。二度とあなたの前には現れない。心配しないで。だからもう帰って」
ふんっ、と彼は尊大に鼻を鳴らした。
「ああそうかいそうかい。だったらくれぐれもきっちり守れよな。そのくせ後からやっぱり無効になりましたとか、そんなくそみてぇなズルは言いっこなしだからな。いいな」
念を押す彼に菜々子は、わかってる、と頷いた。
嫌われて別れる道だけは避けたかった。
だからせめてもここは素直に。
「じゃあね」
そう言って立ち去ろうとしたとき、背後で舌打ちが聞こえた。