まだあなたが好きみたい
何気なく見上げた観客席。
神さまのイタズラかと思ったくらい、まるで、見えない力に導かれるように彼女にスッと視線が向いた。
帰りのときもそうだ。
どうしてあいつに気づいたんだろう。
二度。
たった二度。
そこまではただの偶然だって十分言い切れる、けど―――。
俺にはほとんど戦慄だった。
もう目が離せなかった。
……何がそうさせるのかはわからなかったけど、とにかくあいつをこのまま行かせてしまうのがたまらなく怖かった。
だから慌てて追いかけて声をかけたんだけど……。
(それで喧嘩って)