まだあなたが好きみたい


理屈でなく、闇雲に彼女を怖れていた。


だから煙に巻くようにキツイ物言いをした。



面と向かって女にブスなんて、はじめて言った。



でもそれは相手の機嫌を損ねれば勢い本音が聞き出せるかもしれないという計算も伴ってのことだったけれど、実際、彼女にたいしてそれはほとんど功を奏さなかった。



むしろ一番納得のいかない結果になって、機嫌が悪いのはおそらく俺の方。


しかも、彼女が感じているだろうはずの苛立ちとは由来する根っこがちがうからなおさらタチが悪い。



罪悪感なんて、認めたくもない。



前方から犬を連れた老婆が歩いて来て、とっさに電柱を蹴ろうとしたのを堪えた。



……目的どおり回避はした、したけれど、わかったことといえば彼女が会場にいたのがまったくの偶然ということだけだ。



それを執拗に詰って、責めて、彼女にもういい、と投げやりなことを言わせた。



匡は思わず足を止めた。



今、俺なんて―――……。



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