まだあなたが好きみたい
そうするうち、その曖昧きわまりないものが明確な名前を持った感情として輪郭を得たのは他でもない、彼女が笑顔を取り戻した瞬間のことだ。
その瞬間、俺のすべては彼女だった。
胸が絞られるように痛んだあのときの複雑な心情は今でも忘れない。
俺は、なにひとつ傷つけられる謂われのない彼女を身勝手な理由で傷つけておきながら、彼女に惹かれるという我ながらどうしようもない気持ちを爆発させていた。
しかし、彼女との距離は一貫して変わらなかった。