まだあなたが好きみたい
迷走だって貫けば
「きのう誰かといっしょに帰ってたんだって? だれ?」
人をさんざん待たせた挙げ句、ごめんのひと言より先にこれだ。
菜々子は呆れて首を振る。
「もうすこしオブラートにつつんだ聞き方できないの?」
「おっと、しつれい。でもそういうのって俺の専門外だからねー。聞きたいことにいちいち遠回りなことはしてらんないの」
「モテないよー、そういうのー」
「いいよーべつにー。それより何時からだっけ、試合?」
「あと10分」
「急がなきゃ。てか、ねえって、きのう、誰と一緒に帰ってたのマジで?」
幼馴染みで、同じ高校に通う桧葉有正(ひばゆうせい)。
このとおりの軽薄な物言いと常に半笑いの薄っぺらい表情が「気味悪い」「不愉快だ」と陰口を叩かれ続けて16年。
友だちはいないが、とことん悪い奴というわけでもない。
今日は全国高等学校バスケットボール選手権大会、通称インターハイの予選だった。
部活に所属していない生徒はできるだけ応援に行くよう言いつけられている。
バスケの他、さまざまな部活で予選会は重なっているけれど、菜々子は迷わずこの男子バスケットボールを選んだ。