まだあなたが好きみたい
おそらくそれがきっかけだったんじゃないかと菜々子は思っている。
よく耳にする話。
同じ作業をして笑い合うのは、それ自体はすごく素朴でありきたりなことだけど、実はすごく貴重で、眩しくて、絶大なちからを秘めている。
あの雨の放課後、木野村はわたしをかわいいと言ってくれた。
はじめてそう感じた瞬間のときめきと同じだけ、いや、それ以上の熱量に心が動いたのだ。きっと。
隣で、自分の話を聞いて心から笑ってくれる、
その奇跡に敵うものなんてない。
いつまでたってものらりくらりとあいまいな態度しか取らないわたしに執心しているほうがどうかしてる、もったいないと気づいたんだろう。
うやむやな終わらせ方って、正直、後味はそんなによくはないけど、告白された時点で断るなんて芸当は、わたしみたいな臆病者にできるはずがない。
でも結局、友だちにもなれなかった。