まだあなたが好きみたい


見覚えのある制服。

でもほとんどうろ覚えなのはそれが男子校だからだ。

ショルダーバッグのプリントに助けられた。



「そう」



東はぱっと笑顔になって菜々子の隣に並んだ。



「吉田は霧生か。緑のリボン、似合うな」

「え。あ、ありがとう」



――ちょっと、面食らった。


このひと、前はこんな褒め言葉、さらっと言えるひとだったっけ?


並び方も躊躇がないし。


なんか、高校入ってチャラくなった…? 



「東くんは、なんか、雰囲気変わったね」



気持ち警戒しつつ、いい意味にも悪い意味にもそう言うと、どう受け取ったのか東は照れくさそうに頬をかいた。



「中学の知り合いに会うとよく言われる。でもさ、やっぱ男子高たのしいんだよね。気楽っつーか。だもんで、周りにずいぶん感化されてる感は否めません」



妙にかしこまる東に噴き出して、なんだやっぱり東だ、と菜々子はほっとした。


どうやら変わったのは見た目だけらしい。


それがわかると、無用に意識していた自分が急に恥ずかしくなった。


しかし無理もない。

あのころはこんなに髪が長くはなかったし、眉毛ももっとボサボサで左右の大きさも不揃いだった。


それがいまやモデル雑誌を攻略したような造形に仕上がっているではないか。



(高校生だもん。そりゃお洒落にだって目覚めるわな)



意識という工夫の加わった姿を見れば、それに伴って言動が変化するのも、ごく自然な流れなのかもしれなかった。


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