まだあなたが好きみたい


幼馴染というレッテルが笑いものの種にされることもあって、わずらわしくおもえた時期がまったくなかったと言えば嘘になる。


それでも今は、むしろ彼がいなくなることの方がつらいくらいだ。


過去の苦い体験の折、何も言わずにそばにいてくれた彼には感謝している。


年を重ね、彼の境遇をあらためて思慮する余裕ができてからはそんな冷酷なことは微塵も頭をよぎらなくなった。



だから東の、いっしょにいるよね、がたとえば皮肉でも、虚心なく受け流すことなんてもう造作もないことである。



「いいな。幼馴染って」



しかし、ふいに東の口からこぼれたのは意外にも素朴な憧れだった。



「ええ?」

「いや、いつも仲いい女子と話ししてられんだろ。それってすっげー貴重だよ」

「はは。そっか、東くん男子高だもんね。出会いない?」

「ないない。あっ、いや、作ろうと思えばあるにはあるんだけど。そういう場所を作ってくれるっていう調子のいいやつもまわりには。でも俺はあんまり積極的になれなくて」


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