まだあなたが好きみたい
「俺、いつもは二両目に乗ってるから」
会ったら声かけてな、と言い置くと、東は弾むような足取りで帰っていった。
後姿を見送るや、どっと疲労を感じて、菜々子は胸に手を置いた。
とりあえず、東の聞きたいことには答えられた。
けれど、いざその言葉が暗に示すものを問われたとき、わたしはどう彼に言葉を返せばいいのか。
今考えたって詮無いことだと、軽んじて棚上げしていいことのようにも思えないのがくせものだ。
彼のまなざしや、放出される雰囲気は真剣で、今にもあふれ出しそうな情熱の熱量たるや半端なかった。
軽く取り乱しそうになってるくらいの勢いに、あの場で告白されるのも覚悟した。
たぶん彼自身、あんなふうに気持ちをたぎらせた経験がないのかもしれない。
制御の仕方がわからなくて、いっぱいいっぱいのまなざしを、しかし菜々子は知っていた。