まだあなたが好きみたい
+掴みたい、でも、掴みたくない
あいつだれだよ。
だれだよあいつ。
見たことあるな。
でも、だれだよ。
わかんねえ。
おそろしく邪念に支配されたままジョギングを終え、体育館使用に移ってからも匡の頭は先ほどすれ違った二人連れのことでいっぱいだった。
おかげで何度となくボールをこぼし、パスをスルーし、挙句の果てに、高校に入ってからバスケをはじめた、彼からすれば素人同然の同級生にすら抜かれる始末だ。
仮病を使おうかとかなり真剣に考えた。
しかも、そう思った心の背景には、部活を休んで咎められてでも彼らの後を追いかけたいとする激情が、ともすれば理性すら飲み込みそうになっていた。
ようやく解放されたときにはすでに夜の9時を回っていた。