まだあなたが好きみたい
「おい、どうした窪川。学校戻ってからのおまえずっと調子ずれっぱなしだぞ」
「それに妙におとなしいしな。めずらしく後輩してんの? 柄じゃねえだろ」
「うっせーすよ。俺だってたまにはそんなときもあります」
どーだか、変な物でも食ったんだろ。
てんで信じていない様子の先輩たちが肩を揺らした。
ロッカーは学年順で、なおかつクラスの垣根を取っ払った一年部員全体での出席番号順に割り当てられている。
あ行のいないバスケ部は窪川が一年でもっとも苗字が早いため、必然的に先輩たちと口を利く機会のほうが多かった。
それにくわえ、窪川の場合、通常一年生は経験者でもいったんは二軍に寝かせ経過を見るところを、入部当初から一群ということもあり、彼自身、先に名前を覚えたのは同級生よりもむしろ先輩のほうだった。
もっとも実力者と呼ばれ扱われる者は、得てして同輩よりも年長の者と接することのほうが多くなりがちだ。
それは露骨な嫌味や皮肉もそうだが、ともに試合にでる以上チームメイトとして、もっと心の距離を近づけたいという意図もあるのだろう。
それか、まあ、俺の物怖じしない図太い性格が単純に話しかけやすいのかもしれなかった。
(まあ、それはそれで、いいんだけど…さ)