まだあなたが好きみたい
「菜々ちゃんはずいぶん冷めた子になっちゃったね」
そう言うと、有正はコートに目を落として頬杖を突いた。
熱のない眼差しはわたしと同じものを追っている。
有正は、なぜわたしが数ある部活動の中からバスケを選んだのか、その理由を知っている。
「冷めたくせにさ―――」
言いかけて、菜々子を振り仰ぎ、
「見てる夢の方角がちがうんじゃない?」
菜々子は答えない。
わかってるみたいなことを言うなよ、とおもう。
いんだ、べつに。
固執と呼ばれても構わない。変だよって、言いたいなら言えばいい。
けどいくら空気を読まない有正だってそこまでは言わない。
だって、仕方ないじゃない。膝の上、軽く拳を握る。
わたしだって、自分でもどうしたいのか実際のところ、よくわかってないんだもん。
戸惑ってるんだから。
拒んで拒んで否定して、それでもわたしのきもちをかき乱す。
いくら抗ったところで有無を言わさずこころを惹き付けるものに、見え透いた感情なんてただのズルだ。隠そうとすればするだけ、全身から叫ぶ声がする。
好きって、圧倒的。
刹那に会場が静寂に包まれる。
向かい合う選手たち。
そのなかで、ひときわ余裕の浮ついた顔がひとり。
(あいかわらずね)
選手が散る。
試合開始のブザーが鳴り響いた。