HとSの本 ~彼と彼女の話~
 二回目は、体調が悪いのかと思った。

 たまたま来なかったある昼下がり、
  一人で弁当を食べた少し寂しい昼休み。

 三回目は、風邪が悪化したのかと心配した。

 独りしかいない涼しげな昼下がり、
  黙々と食べた弁当は美味しくなかった。

 四回目に、避けられているんだと気がついた。

 学校で見かけた紅い翼の後姿、
  今日は来るかと思った昼下がり、
   独りの食事時。

 五回、

 六回、

 七回、

 勝手に現れる自分はだんだんと腹を立てた。
 なぜ無視するんだろう、
 避けられる何かをしたのかと、
 訳が分からず苛立っていた。

 それは十回目の昼前だったと思う。



 階段を降りて行く、彼女の後姿を見た。



 校舎内で会うのは珍しい。いっそとっ捕まえてやろうかと、手を伸ばそうとしたその時だった。


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