HとSの本 ~彼と彼女の話~
 ここにいた少女は、


  何処にでもいる女の子でした。



 では、学校にいた女の子は。


 そう、何処にでもいる――――


 いじめられている、可哀想な女の子。



 謝らなければ。
 そう思うと、居ても立っても居られない。

 すぐにでも教室を突きとめて、床に叩きつけるほど頭を下げて、謝らなければいけない。

 そう思うのに、体は何故か動かない。



 ああ、答えなんて単純で。

 自分はとても利己的な人間なのだ。

 謝ってしまえば、謝りに行けば、そこできっと関係は終わる。

 二度とそこには行かないと、もう君とは関わらないと言うだろう。

 でもそれでは、俺はあの子の笑った顔が見れないんだ。

「……どうすればいいか。答えは一つだ」

 謝ろう。

 謝って、
  彼女の隣にいる事を、
   赦してもらおう――――


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