HとSの本 ~彼と彼女の話~
雨の会合

彼女の雨

 ――――謝りたかった、じゃダメなのか?

 真っ直ぐと、わたしを見つめてそう言った。

 瞳の中に迷いも、

 後ろめたい思いもない。


 ごめんなさいと、そう投げかけてくる瞳と言葉。

 なぜ謝るのか、わたしにはそれが理解できない。

 謝るのは――――

「ごめん。君はここでは、素の君でいられたんだよね。
 君の居場所を場所を奪って、ごめん」



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