HとSの本 ~彼と彼女の話~
風が心地良かったと覚えている。切り揃えられた亜麻色のショートカットが彼女の顔を隠してしまった。
その間に、隣に立っていた。
座っていた膝の上から数羽の鳥が羽ばたいていく。
白い羽が抜け落ちて、
風に遊ばれていく姿を、
彼女はじっと見つめていた。
「隣に、座ってもいいかな?」
ウサギみたいに真っ赤な瞳が、この時初めて自分を見てくれた。
けれど、返事はなかった。
無表情、と少し違った顔で自分の膝元に視線を戻してしまった。
その態度は拒否の姿勢だと知った自分は、
容赦なくその隣で胡坐をかいた。
さすがに驚いたのか、一瞬ちらっとこちらを見たが、視線はすぐに戻った。
今は昼時、なら昼食をとるのが当たり前だ。
取り出した小さなバスケット、今日はパン食なのでそれほど大きな物ではない。ただバリエーションが豊富で味に飽きたりしないのが、サンドウィッチの利点だと思う。
小さく手を合わせ、いただきますをした。
ふと、隣を見れば向こうもこちらを見ていた。
ただし、その視線は自分にではなく下に置いたサンドウィッチのバスケットにだった。
手始めに一つ。単純にタマゴを挟んだ物から食べる。特製のマスタードを使用しているので、ピリリと美味しい。
左手側にあるのは冷たい紅茶だが、これは食後と決めているので先に食べてしまう。
一つ目を食べ終わるまでお互いに無言だった。
初対面同士だったし、物を口にしながら話すのはマナーがなっていない。
だから一つ目を食べ終わるまで、その疑問は口にしなかった。
その間に、隣に立っていた。
座っていた膝の上から数羽の鳥が羽ばたいていく。
白い羽が抜け落ちて、
風に遊ばれていく姿を、
彼女はじっと見つめていた。
「隣に、座ってもいいかな?」
ウサギみたいに真っ赤な瞳が、この時初めて自分を見てくれた。
けれど、返事はなかった。
無表情、と少し違った顔で自分の膝元に視線を戻してしまった。
その態度は拒否の姿勢だと知った自分は、
容赦なくその隣で胡坐をかいた。
さすがに驚いたのか、一瞬ちらっとこちらを見たが、視線はすぐに戻った。
今は昼時、なら昼食をとるのが当たり前だ。
取り出した小さなバスケット、今日はパン食なのでそれほど大きな物ではない。ただバリエーションが豊富で味に飽きたりしないのが、サンドウィッチの利点だと思う。
小さく手を合わせ、いただきますをした。
ふと、隣を見れば向こうもこちらを見ていた。
ただし、その視線は自分にではなく下に置いたサンドウィッチのバスケットにだった。
手始めに一つ。単純にタマゴを挟んだ物から食べる。特製のマスタードを使用しているので、ピリリと美味しい。
左手側にあるのは冷たい紅茶だが、これは食後と決めているので先に食べてしまう。
一つ目を食べ終わるまでお互いに無言だった。
初対面同士だったし、物を口にしながら話すのはマナーがなっていない。
だから一つ目を食べ終わるまで、その疑問は口にしなかった。