HとSの本 ~彼と彼女の話~
二つの雨
どうしてこんなに謝っているのか、堰を切ったように溢れ出すごめんなさい。
ただ一つだけの言葉じゃない、伝えたい思いがありすぎた。
こんなわたしに声をかけてくれて、
ありがとう。
優しさが怖くて、逃げてしまって
ごめんなさい。
二人で過ごした時間は、
とても楽しかった。
雨に打たせてしまって
ごめんなさい。
悲しい思いをさせてしまって
ごめんなさい。
独りにさせて
ごめんなさい。
謝りたい事が多すぎて、
人と触れ合う事を忘れたわたしには、
どうすれば気持ちが伝わるのか分からなくて。
「もういいよ」
雨に打たれたわたしの肌は冷え切っていた。氷のように冷たい手が、ぎゅっと何かに包まれた。
温かい熱だった。
氷を溶かすのではなく、暖めてくれる熱。
人肌に戻ったわたしの手は、別の温もりを感じ取っていた。
わたし以外の温かさ、
わたし以外の感触、
わたし以外の掌を。
心が落ち着いていく。
ああ――――人はこんなにも近くて、
温かいものなんだ。
「…………ごめんなさい」
これで最後。
万感のごめんなさいを、この一言で。
「そして、ありがとう」
わたしの手をとってくれて。
わたしに触れてくれて。
――ありがとう――
ただ一つだけの言葉じゃない、伝えたい思いがありすぎた。
こんなわたしに声をかけてくれて、
ありがとう。
優しさが怖くて、逃げてしまって
ごめんなさい。
二人で過ごした時間は、
とても楽しかった。
雨に打たせてしまって
ごめんなさい。
悲しい思いをさせてしまって
ごめんなさい。
独りにさせて
ごめんなさい。
謝りたい事が多すぎて、
人と触れ合う事を忘れたわたしには、
どうすれば気持ちが伝わるのか分からなくて。
「もういいよ」
雨に打たれたわたしの肌は冷え切っていた。氷のように冷たい手が、ぎゅっと何かに包まれた。
温かい熱だった。
氷を溶かすのではなく、暖めてくれる熱。
人肌に戻ったわたしの手は、別の温もりを感じ取っていた。
わたし以外の温かさ、
わたし以外の感触、
わたし以外の掌を。
心が落ち着いていく。
ああ――――人はこんなにも近くて、
温かいものなんだ。
「…………ごめんなさい」
これで最後。
万感のごめんなさいを、この一言で。
「そして、ありがとう」
わたしの手をとってくれて。
わたしに触れてくれて。
――ありがとう――