みんな、同じ。



───…

6時になった。

おいしそうな匂いがリビングには立ち込めている。

今日は、久世くんの歓迎会で、お母さんが腕によりをかけて料理を作ったらしい。
確かに、量がいつにも増して多い。

「さぁ、いっぱい食べてね!」

「真理さん、作りすぎなんじゃ…」

「………」

久世くんは、言葉が出てこないようだった。

でも。
ちょっと嬉しそうにしてた。

私も、嬉しい。

私の好きな料理がいっぱいある。
全部食べられるかわからないけど、すごくおいしそう。

「いーちゃんが好きそうなものしか、思いつかなかったけど」

「………っ」

こういう時、すぐに言葉が出たら、いいのに。
いつも、思う。

嬉しいって。
ありがとうって。

席に着く。
椅子は元々四個あって、一個はいつも使われてなかった。

その一個が、今日は埋まってる。
満席だ。

「いただきます」

みんなで、手を揃えて、声も揃えて言った。

いつもより、楽しいかもしれない。


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