みんな、同じ。



楽しいなぁ。
楽しい。

1人増えただけで、こんなにもいつもの風景が変わるなんて。

最初はなんだかいやというか、複雑だったけど。
こんなことがあるなら、いいやって。

楽しいなぁって。

そう思えたから、もういいんだって思う。

家でこんな風に笑ったのは、初めてかもしれない。

前髪が鼻にかかったから、耳にかけた。

そしたら、お母さんが私を見て微笑んだ。

「いーちゃん、綺麗な顔してるわよね。
前髪切って、皆に見せちゃえばいいのに」

「………あ、え…と」

「真理さん。
それは、難しいよ」

珍しく、お父さんが口を挟んだ。

「あれは、あの前髪は、自分を守ってるんだ。
怖い目に、合わないように」

お父さんが、悲しそうな目で私を見た。

なんだか居た堪れなくて、目を逸らした。


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