染まる
第一章 始まり
今、私は病院のベッドに居る。
あの何もかもがキラキラしていた日々を走馬灯のように振り返りながら。

心地よい風。
桜も満開なあの日、私は真新しい制服で中学の門をくぐった。
私は中一の時、親の都合で都会の学校から田舎の冴えない中学へ一ヶ月遅れで編入した。
いわゆる転校生
誰も知らない奴らばかり。
なんて退屈な学校だ

都会の小学校では、みんなやんちゃ盛りで。
保健室からオキシドールを盗んでは、髪を脱色していた。

それに比べてこのクラスは地味で冴えない奴らばかりだ。

退屈な初日がやっと終わり、下駄箱へ向かった。
『おい!』
なんだか冴えない不良気取りの女が私を呼び止めた。

はい。

『お前転校生だろ?なんだ?その髪の色は!靴も黒なんか履いてんじゃねぇよ!』

あー!面倒くせー!
さっそく来たか。

『ちょっと裏庭来いよ!』

はいはい。

私は幼少の頃から、身勝手な母親に。
いや。母親と言うより女に振り回され、挙句の果てには、育児放棄されて育った。
祖母や親戚の家をたらい回しにされ、そのせいか?
私の瞳からは、いつからか光は消え。
闇の眼差しが瞳の奥に居座っていた。

裏庭に行くと、真面目そうな女達が数人集まってた。

『お前、メンチ切ってんのか?殺るぞ!』

(上等じゃねーか!)

女は先制攻撃で太もも蹴り
(効かねーな)

私は女の髪を掴み、膝裏を蹴り飛ばし。
地べたへ倒し馬乗りでボコボコに顔面を殴り…
その後の記憶は無い。

ただ覚えるのは
『もうやめてあげて!まち大丈夫!』
と言う声…。

どうやら、闇の目が私を支配してしまったようだ。。。

とりあえず、家に帰って汚れた制服を脱ぎ、母のスナックへ行った。

ドアを開けると酔った目つきで『おかえり…』
その四文字だけ。

その目には
(いつものようにやれ!)
と言う眼差し。

常連客に『今日から私、新しい中学に編入したの。』
と、愛想笑。

常連客と古臭いデュエットを歌わされ、チップを貰う。

もちろん、チップは母に没収された。

一仕事終えて、母から小遣いを貰って。
近所の居酒屋で一人夕飯。

居酒屋のマスターは幼い頃から私を可愛がってくれてる。
母には内緒でただ飯を食べさせてくれてた。

『ゆき!今日から新しい中学だったんだろ?』

そう。私の名前は『ゆき』本名は松永由紀子

『で、どうだった?楽しめそうか?』

マスター!登校初日で喧嘩売られたわ(笑)

『そりゃそうだ(笑)ゆきの目つきと、その身なりじゃ、仕方ないよ(笑)』

まぁ、何も無いより楽しめたわ!(笑)

マスターは年々ハゲが増して。
今ではスキンヘッドだ!
だから私はマスターを『ハゲ』と呼んでいる。
マスターは『お前くらいだ!俺をハゲなんて呼ぶヤツは!』
と、冗談混じりのマジ顔で言う。。。

明日も学校だから帰るわー!
ごちそうさん!
ハゲ(笑)『こらー‼︎』

次の日…。
校門の前に昨日の女が居た。

どうしたんすか?

『昨日は本当に悪かった!ごめんな。』

は?はぁ。。

『もし、何か困った事があったら言って!私二年三組の大友まちこ!ヨロシクね!』

はい。。。

教室に入ると、クラスがざわめいてた。

(なんだ?)
みんなのチラ見視線の先には、窓枠に座っている見るからに男のヤンキーが二人。
一人はイケメン。
もう一人はデカいムキムキの坊主。

昨日の放課後の噂が拡まってるみたいだな。。これは…。

二人は私に近寄ってきた。

(女と喧嘩する気かよ。。アホちゃうか?)

イケメンが一言笑みを浮かべ私に言った。

『お前が、まちヤったんだ〜!放課後、教室に迎えにくるわ。俺二年二組の純!で、こいつが慎吾!とりあえず放課後な!』

その言葉だけを一方的に言い放って、去って行った。。。

こんな冴えない学校にも、あんな奴ら居るんた。。。






























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