染まる
第四章 爆音

あのプールのキスから
私と純は学校でも噂のカップルになった。

純は無邪気な性格で
休み時間になる度、私のクラスに会いに来た。

渡り廊下が私達の場所。。。

純は人目も気にせず、手を繋いだり抱きしめたり。

同級生、先輩女子の羨む顔が何だか私に優越感を与えた。

(私、この学校の憧れの男と付き合ってるんだ。)

それから一ヶ月くらい経ったある日。
私と純、その他の仲間達が亮介さんに呼ばれた。
亮介さんの家へ行くと、そこには真っ白な特攻服が掛けられていた。
金、銀、赤、黒。。。
派手派手しい刺繍がびっちり…。

亮介『俺、族入った。』

へぇ。イイっすね!!
かっこいい刺繍じゃないすか!

みんな特攻服に釘付け状態。

族の名前は『國走會』と刺繍されていた。

亮介『で、今週の土曜日集会があるんだけど来いよ!』

純達は二つ返事で喜んだ!

純達は集会に何度か行った事があるらしく。
私は祭りでたむろしてる暴走族しか見た事が無かった。

ドキドキしながら楽しみだった。

でも、その影で悲しそうな顔の弘美さんがいた…。

今、思えば。
あの時の弘美さんの心境がわかるような気がする。

ヤンキーだろうが、大人びていようが、まだ中3。
無免許で単車を乗り回し、何度もパクられ、挙句、暴走族。。。

彼女としてみれば心配だったのだろう。

そして土曜日の夕方、慎吾の家に集まった。
亮介さんが爆音を鳴らしながら来た。

マンションの下へ降りると、数台の単車と族車3台。

亮介『ゆきは、直樹さんのこの車に純と乗れ!慎吾は俺のケツに乗れ!あとは適当に乗せて貰ってくれ!』

そこには弘美さんの姿が無かった。

私は純とクラウンのしゃこたんに乗った。
亮介『さ!行くか!』

亮介さんの合図で一斉に爆音がマンション中に響き渡り、私達は集会へと向かった。

山道を一時間くらい走っただろうか。
辺りは真っ暗。
ふと前を見ると何十台と単車や車が集まっていた。
後からも何十台と。。。

純、私ジュース買ってトイレ行ってくるね!

『危ねえから俺も行く。』

ありがとう。

うじゃうじゃ居る人混みを手を繋いで、自販機へ。

何か、みんな特攻服違うね?

『ああ。今日は合同集会だからな』

合同集会とは、他の暴走族や暴走族に入ってない一般人が集まり走る集会らしい。
だから私達も呼んで貰えたんだ。。。

それにしても、この爆音!
タイヤの焼けた臭い!
排気ガスの臭い!

純の声も聞こえないよ。
こんなに側に居るのに。。。

でも、何だろう。
このゾクゾク感…。
身震いがする。

車に戻り、しばらくすると。
段々と爆音が大きくなり、みんなエンジンを吹かし始めた。

純『そろそろですね!』
と運転してる直樹さんに言った。

おう!行くぞ!

前車が走り出した。
それに続いて一斉に爆音を鳴らし、競うかのように走り出した。

純は窓を全開に開け、箱乗りし始めた。
『ゆきもやるか?でも落ちるなよ!』

私も窓から身を乗り出し、風と爆音と排気ガスの臭いを全身に感じた。

亮介さんと慎吾が私達の車の隣に来て、笑ってる。

爆音で会話は聞こえないけど、みんな楽しんで走ってる。

それぞれ改造した自慢の単車。

この人達は、本当に走る事が好きなんだ❗️

(楽しい!この世界!)

信号を止める役
パトカーの追跡を遅らせてユックリ走る役…。

私はこの世界に魅了されてしまった。

何時間走っただろう。。。

パトカーの台数も増えてきて、ケツ持ちが、みんなを散らせて解散した。

その後、純の家まで送ってもらい。
純の家で今日の事とか、私がまだ会った事の無い人の話で盛り上がった。


あの時の爆音、臭い、今でも忘れない。







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