染まる
第五章 ひとつに

集会の後、純と色々な話をしていたら

私は純の家で、いつの間にか寝てしまった。

朝方、目覚める。

(あ。寝ちゃった!)

ふと、隣を見ると。
純は私の顔をじっと見つめていた。

ゴメン!寝ちゃった。
純は、起きてたの?

『ゆきの寝顔見てた。あほ面で寝てたぞ(笑)』

ちょっと〜!やめてよ!(笑)

『嘘〜!寝れる訳ねぇよ。俺だって男だぞ!好きな女と2人きりで…』

そう言うと、純は私のおでこにキスをした。。。

そして、唇に…。

(もしや!この展開は!)

純の鼓動も私の鼓動も、聞こえてるんじゃないかってくらい。
ドクドク。

『俺、ゆきを大切にしたい。。。』

うん。

『だからゆきが、いいよって言うまでSEXはしない!』

うん。。。

『今日は日曜日だし、どこか行くか!』

うん❗️

じゃあ、私一旦家帰って着替えてくるね!
純も来る?

『いいの?そう言えば、ゆきの家行くの初めてだな!』

大丈夫!うち母親しか居ないし、今頃酔いつぶれて爆睡してるから(笑)

純もシャワーを浴びて、一緒に私の家へ来た。

『なんか、ゆきの家デカいな!』

まぁ、どこかの愛人に買って貰ったらしいよ。。。
うち、スナックやってるの。
母親は昔、銀座のママやってて。
おばあちゃんも銀座で雀荘経営してたの。
その時の客が私の父親。
離婚はしてないけど、もう帰って来ないの。。。

引いた?

『引かねーよ!ゆき一人で飯食ってるのか?』

うん。最近は純とか仲間と食べてるから、しばらく行ってないけど。
行きつけの居酒屋があって、そこのマスターに食べさせてもらってた。

『そうか。じゃあ、とりあえず飯食いに行くか!』

そうだね!お腹すいた〜!
純のおごりね(笑)

『ラーメンだな(笑)』

いいよ!(笑)

そんな会話をしてたら、電話が鳴った。

もしもし。

『ゆき?』
(弘美さんの声。)

どうしました?

『亮介がね…亮介がね…』
(弘美さん…泣いてる。)

亮介さんがどうしたんですか❗️

(電話が切れた…。)

純!弘美さんからだった!
何か、泣きながら。
亮介が、亮介が、って!

『何だ!亮介さんに何かあったのか!』

わからない!

とりあえず、弘美さんの家行こう!

『そうだな!』

私達は、弘美さんの家へ急いだ。

ピンポン!ピンポン!

出て来ない。

弘美さんは、一人暮らし。
最近、亮介さんと暮らし始めたばかりだった。

『裏まわろう!』

私達は平屋の裏窓へ行った。

窓が開いてる!
私達は躊躇なく中へ入った。

弘美さん!弘美さん!

リビングの灰皿の上には、何か写真を燃やした形跡があった。

純が叫んだ!

『弘美さん!弘美さん!ゆき!来い!』

私は純の声がするバスルームへ行った!

そこには、手首を切って湯船に横たわる弘美さんが居た…。

『ゆき救急車!』

私は頭が真っ白になりながらも、必死で救急車を呼んだ。

純は弘美さんをリビングまで運んで、私はタオルとその辺にあったヘアーゴムで弘美さんの手首を縛った。

布団を掛け、体を温め…。

5.6分で救急車が来た。

私達に出来る事は、それくらいしか無かった。。。

救急車に一緒に乗り、病院まで行った。

純が病院の公衆電話から亮介さんの家へ何度も電話を掛けてたけど、誰も出ない…。

私は待合室で、今、何が起こっているのか分からず。
ただ弘美さんが生きている事だけを祈った。。。

医者が私に、大丈夫です。

と報告にきた。

(よかった…。)
私達は病室に入る事を許可された。

ベッドには、まだ薬で眠らされてる弘美さんが居た。

二時間くらい経った頃。
弘美さんが目を覚ました…。

まだ薬でぼーっとしてる中
『亮介…。』
と一言。。。

電話を掛けまくってる純を呼びに行った。

『弘美さん!何やってるんだよ!』
純が弘美さんに、少し強い口調で言った。。。

『亮介さん呼びますから!!』

亮介さん電話出ないの?

『亮介さんの家も、亮介さんの友達の家にも掛けたけど。誰も家に居ないんだ』

その時、弘美さんがもうろうとした声で。

『亮介…居ないの。もう居ないの…』

弘美さん?
どうしたの?何があったの?

『亮介…死んじゃった…』

何言ってるの!?

純『弘美さん!何言ってんだよ!』

弘美『今朝ね、亮介のお母さんから電話があったの…事故で即死だったって…』

私達は、固まったまま動けなかった。

昨日、集会で一緒に走って。
すごく楽しそうで…。

その時、慎吾が病室に入ってきた。

純が電話したらしい。

弘美『亮介は総大病院に居るわ…。私は大丈夫だから、会いに行ってあげて…。』

私達は、すぐ亮介さんの病院へ向かった。
慎吾には向かう途中で経緯を説明した。

病院に着いて、受付に確認して。
待合室で待ってたら、亮介さんのご両親が来た。

『純君、慎吾君、ゆきちゃん…亮介に会ってあげて…』

亮介さんのお母さんが泣き腫らした目をしながら、私達に言った。

地下へのエレベーター。

そこには、霊安室と書かれた部屋。

私達は、ご両親と入った。
亮介さんの友達も居た。

白いシーツ、顔にも白い布…。
お母さんが顔の布をそっと取った。

亮介さん…。

私達は、ゆっくりと側へ行った。

現実なのか、悪い夢でも見ているのか。

純『亮介さん…亮介さん!!何でだよ!何でだよ!』

慎吾『亮介さん…すみません!お父さん、お母さん!すみません!!』

亮介さん!!起きて!弘美さん待ってんだよ!!

後ろで、お母さんが嗚咽が出る程泣いた。。。

私達は、しばらく亮介さんと一緒にいた…。
亮介さんの友達も、たくさん来た。

帰り道。
慎吾が言った…。

『俺のせいだ。』
純『慎吾!何だよ!何があったんだよ!』

慎吾『昨日の集会で、みんな散った後。お巡りも居なくなった事だし!もうちょい流すか!!って亮介さんが言ったんだ。』

純『それが何で慎吾のせいなんだよ!』

慎吾『亮介さん。あの日すげー熱で、ケツに乗ってても分かるくらい高熱だったんだよ…。俺が、帰りましょうって言ってたらよぉ…』

慎吾。やめろ!そんな事二度と言うな!

私は慎吾に初めて罵倒した。

お母さんが話してくれた経緯は、集会の後。友達を家まで送って、弘美さんの家の手前の交差点でトラックと正面衝突して、ほぼ即死だったらしい…。

私は、その話を聞いている時。
今弘美さんがどうなってるか、お母さんには言えなかった。

言ってはいけない気がした…。

私達は、もう一度。
弘美さんの病院へ行った。

弘美さんは、また薬で眠らされていたので。
メモを残して帰った。

(亮介さんに会いに行きましたよ。また明日来ます。)と…。

そして、夜。
仲間と慎吾の家に集まった。

亮介さんが吸ってた煙草を、みんなで吸って。。。

誰も、亮介と言う言葉を発しなかった…。
ただ、ひたすら写真を見ていた。

みんな寝ずに、ただひたすら…。

次の日のお昼頃、私だけ弘美さんの病院へ行った。

弘美さんは、じっと天井を見上げてた。
その目には涙がいっぱい溢れていた…。

弘美さん。
私が声を掛けると、今私に気づいたように。
涙を拭い…。

『ゆきちゃん…ありがとう。亮介元気だった?』

と…。

はい。元気でした!いつもの顔で笑ってました!

泣きながら、そう答えた…。

『ゴメンね。私、バカな事しちゃったね…。』

弘美さん。バカです❗️
すみません…。

『ひとつになりたかったの…。』

弘美さんは、その一言を言って。
また眠りについた…。

ひとつになりたかった…。

その言葉は、まだ私には重く。
そして、切ない言葉だった…。





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