プライド捨てて愛に生きますけど、それがなにか?
「湯江、最近どうしたの」
「み、みみミカちゃんん!」
声が裏返らなかったのは奇蹟だ。
ああ。実花。今日も俺には眩しすぎる。つか俺、もしかしてキモいか?
実花がキモ男すきならそれもまた結果オーライ?
あ、ちがった。実花が好きなのはキモ男じゃなくてダサ男だったか。
「最近湯江、ちょっと変…じゃない?」
「へ、へんっ?!」
「……あ、変っていうか、や、ちょっといろいろ変わったから……どうしたのかと思って」
実花が若干引き気味にきいてくる。
「何かあったの?」
「ってわけじゃなくて、ちょっと俺今自分的ブラッシュ・アップに目覚めてて!」
「最近、湯江、うちの哲平とばっか遊んで付き合い悪いんだって?」
遊んでるわけじゃなく、対実花攻略作戦の総指揮・作戦参謀をお願いしてるだけです。マル秘情報なんで実花にはひみつですが。
「広田くんたち、ちょっと怒ってたよ」
「いんですよー。広田も田所も日村も、あの三馬鹿どもはひとのことキモイキモイって人種差別入ってますんで」
「でもさ、広田くんはさ、きっと最近湯江があんま遊んでくれないからいじけてるんだと思うよ。湯江ってやっぱ一緒にいるとたのしいからさ」
た、の、し、い?
今なんておっしゃいましたか?
「みみみみミカちゃんもそそそう思うのののののの?」
うわ。なにこのドモり方。完璧俺不審者でしょ。
実花は至って冷静に、
「……思うよ?」
としごく当然のことのように答える。
分かりきってることをなぜ改めて訊かれるのか分からない、
といでもいうように不審そうに眉を寄せている。
やばい。超うれしんですけど。
ああ、ぎゅってしたい。いま実花のこと超ぎゅってしたい!
しねそう!
「ピアスも取っちゃったんだ」
実花が残念そうに俺の耳をみる。
つい先日までピアスが刺さりまくっていた耳は穴だらけの蜂の巣状態だ。
惜しむように言われたから、つい。
「ミカちゃん、ピアスなんて嫌いなくせに」
そう言ったら、
少しだけ傷ついたような顔をされてなんだか俺までチクリとした。
「……たしかにあまり好きじゃないよ。でも。でも湯江にはよく似合ってたと思ってたんだ」
うれしかった。
けど。
うれしがってちゃダメだ。
俺なりのいいところを認めてもらうんじゃなくて、
実花が好きなタイプの男にならないと。
実花がすきになって当然、くらいな存在にならなくちゃ。
そのためなら実花がみとめてくれた俺なりのいいところさえ捨てなきゃならない。
そう思ってても褒められたことがやっぱりうれしかった。
捨てなきゃいけないのが惜しくなるくらい。