桜の木の下で-約束編ー
*
「和喜、危ないわよ」
待ち合わせの交差点前。
有香さんが、
ボクの体を咄嗟に引き寄せる。
「……有難う……」
「言いわよ。
幾ら、YUKIが身軽で運動神経がいいって言っても
車と喧嘩は洒落にならないわ。
交通事故なんて御免よ」
「うん」
言われるままに、有香さんの車に乗り込んで
現場へと向かう。
いつものように、
YUKIとしての姿を形どり、
何時【いつ】もの仮初の日常に
自分自身の心の許す場所を求める。
仮初の時間。
その時間だけボクは……
鬼を忘れ……焦がれ続ける
……人と慣れる……。
現【うつつ】の夢に溺れながら……。
心は、この季節のように少しずつ
凍りついていく。
ボクは
どうしたらいい?