桜の木の下で-約束編ー








……何故……。




ボクが鬼として人に焦がれ続けたから?

鬼の務めを怠っていたから?



どれだけボクを責め続けても、
ボクの声は戻らない。




『ボクは一体……』




思わず独り言を紡ぐボク。


そしてその時、ボクの声が失われてしまったのは
人としての時間であって、
鬼としてのボクの声は今も発せられていることに気が付いた。



ボクは人の世に拒絶されたの?





神木の回廊を潜り抜けて
駆け込んだ、狭間の世界。


この場所はとても優しいけれど、
この場所は……とても寂しい。


……孤独……。


鬼を狩るモノ。
人を守るもの。



鬼の中でも異質のボクが、
唯一、安らげる門番の狭間。





鬼が人に思いを寄せ、
鬼が人の世の理を犯したから。




だからボクは、
人の世の声を失ったですか?






咲を知れば知るほど、
近づけば近づくほどに嬉しさと怖さが
ボクの中に広がった。




咲はボクが知らない世界を
ボクに教えてくれる。



咲は新しい世界をボクに伝えてくれる。




その世界に触れたいボク。

今を守りたい
……ボク……。

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