桜の木の下で-約束編ー
*
……何故……。
ボクが鬼として人に焦がれ続けたから?
鬼の務めを怠っていたから?
どれだけボクを責め続けても、
ボクの声は戻らない。
『ボクは一体……』
思わず独り言を紡ぐボク。
そしてその時、ボクの声が失われてしまったのは
人としての時間であって、
鬼としてのボクの声は今も発せられていることに気が付いた。
ボクは人の世に拒絶されたの?
神木の回廊を潜り抜けて
駆け込んだ、狭間の世界。
この場所はとても優しいけれど、
この場所は……とても寂しい。
……孤独……。
鬼を狩るモノ。
人を守るもの。
鬼の中でも異質のボクが、
唯一、安らげる門番の狭間。
鬼が人に思いを寄せ、
鬼が人の世の理を犯したから。
だからボクは、
人の世の声を失ったですか?
咲を知れば知るほど、
近づけば近づくほどに嬉しさと怖さが
ボクの中に広がった。
咲はボクが知らない世界を
ボクに教えてくれる。
咲は新しい世界をボクに伝えてくれる。
その世界に触れたいボク。
今を守りたい
……ボク……。