桜の木の下で-約束編ー
気になるのは液晶画面。
電波は?
メールは?
ボタンを押してライトアップされた液晶画面。
覗き込んだ画面に、
電波の強度を知らせるアンテナは一本も立ってなかった。
えっ、圏外なの?
でも圏外マークすら出てない。、
マジっ、ホント何処なの?
思わず……その場にへたへたっと座り込んで
再び、周囲を見渡す。
……闇が落ちてくる……。
濃いく
……深い……闇色……。
思わず携帯電話のデーターを開いて、
YUKIの曲を再生していく。
透き通ったYUKIの箏の音色が
携帯のスピーカーから波音を描いていく。
広がっていく
柔らかな空気。
……和鬼……。
貴方の声はたったこれだけで、
こんなにも元気をくれるんだね。
携帯電話を握りしめて、
もう少し暗闇の中を歩いていく。
和鬼が歌う曲を何度もリピートしながら、
何曲分かを歩ききった時、視界に人の姿が止まる。