桜の木の下で-約束編ー
『……咲鬼……。
我、舞がそなたを導こう』
威厳溢れる口調で和鬼が呟くと、
少女は覚悟を決めたように頷いた。
桜鬼神が鼓と琵琶、箏の音色にあわせて
舞始める。
鬼神の舞う指先からは、
狂わんばかりの桜吹雪が広がっていく。
その雅やかな音色と鬼神の舞に
誘われるように少女はゆっくりと鏡の方へと歩いていく。
鏡に指先が触れる……。
その指は……留まることなく鏡の奥の世界へと
吸い込まれていく。
少女は鏡の中の世界へと旅立っていった。
旅立ちを見送って
少女のいなくなった部屋で歌を紡ぐ独り残された和鬼。
和鬼の指先には、
何時の間に手に入れたのか、
先ほど少女から手渡された首飾りの紐が握られている。
静かに首飾りを見つめて、
唇を押し当てた後、愛しそうに自らの首へとかけていく。
☆
……愛しき人……
君、在りし……
日を胸に秘め
我……
今を歩む……。
君に幸あれ
日の光溢れる
世界よ
君の旅立ちを
我……
寿ぐものなり……
☆