桜の木の下で-約束編ー
咲を見れば見るほど、
咲鬼を想うボクがいた。
そんなボクの寂しさを
埋めるために、
人の世の仮初を得た。
仮初でもいい。
僅かでもいい。
咲の目に触れたい。
なのに咲はYUKIではない、
鬼のボクを捕えた。
喜びに震える心は
同時に罪に怯えはじめる。
桜鬼神としての仕事に
恥はない。
だがボクは、
最愛の彼女をこの手にかけた。
記憶を取り戻した彼女は
ボクを許してくれる?
ううん、鬼の世界を離れ
人の世界を歩きだした彼女は
ボクを何処までなら受け止めてくれる?
そんな葛藤を繰り返してるうちに、
何がなんだかわからなくなった。
ボクの真実の想いは
今も咲鬼にあるの?
今は……咲にあるの?
そんなことすら、
わからなくなってしまったボクは声を失った。
君から逃げ出したボクの傍に
君はもう来てしまったんだね。
君から放したかった
この世界までも、ボクを追いかけて。