桜の木の下で-約束編ー
その一瞬一瞬を
慈しむように
柔らかく……
……甘美な時間……。
和鬼によって……
美しい花を
咲かせていく……
最愛の時間。
『いつか……
桜の木の下で……』
脳裏を霞める
古の誓いの言葉。
甘い時間に何度も啼き、
涙が一筋真珠を落とした……。
……幸せになろう……。
私たち二人は……
絶対に
幸せになろう。
☆
「おはよう、和鬼」
「おはよう、咲」
いつもと同じ始まり。
だけど昨日とは違う
新しい始まり。
思わず時計を見つめて絶句。
遅刻するー。
慌てて和鬼の部屋を飛び出して
制服に袖を通す。
そして昨日とは違う三人分の朝食を
準備する。
お味噌汁の香りが
室内に広がっていく。
「お祖父ちゃん、おはよう。
朝ごはん、出来てるから。
後で、食べてね」
着替えを済ませて
優雅な足取りで台所に降りてくる和喜。
和鬼の時は幼さが残るのに、
和喜の姿の時はその幼さが……消える……。
プラチナの髪が窓から差し込む朝陽を受けて輝く。
何日か過ぎていたと思ってた時間は、
何もなかったかのように、
始業式の翌日を迎えただけだった。