桜の木の下で-約束編ー


二つのボクの想いは、
どちらも純粋なのに、
うまく両立できないジレンマ。



それでも……帰れる限りは、
影を渡って、
この場所に戻ってくる。



それはこの地を守護する
ボク自身の役割……。



ボクの居場所を守り続けるために
行わなければいけない、
三つの役割。


三つのボク。



どのボクも両立させることは
ボクの我儘?




深夜、咲の隣で
床に座りながら、
気配を広げて鬼のボクの役割をこなす。


一通り、空間を渡って
鬼の現状、人の迷い人が居ないかを
辿った後、意識を現世に戻すと
携帯が着信を告げる点滅をしている。







YUKI


夜分にごめんなさい。
咲ちゃんの様子はどう?

フランスのLIVEの商談が入ってるから、
明日は私が迎えに行くことが出来なくなりました。

伊藤くんに行って貰うから、
いつもの様にお願い。



有香







有香からのメールを確認すると、
再び、ベッドにもたれかけて目を閉じた。

ボクに触れる指先の温もりに
目が覚めたボクは約二週間ぶりに、
同じベッド、咲の隣で眠りにつく。


明くる朝、咲が起きだす前に
ベットを抜け出して澄んだ空気の中、
窓を開けベランダから神社へと和鬼として舞い上がる。



有香がくれた、
今日はYUKIの誕生日。

ボクと有香で出逢った記念日。




桜の木の枝に腰掛けて、
街中を眺める。



この景色を愛でるときは
この地を守る、守護者としての
ボクを強く感じる。




居場所を失い、我を見失いかけて
朽ちかけたボクをこの場所で、
咲久が助けてくれた。




この手に流れる消えない紅い血は、
ボクの罪が浄化されるまで
消えることはない。


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