桜の木の下で-約束編ー
真っ赤な紅葉が、
舞い踊る闇の中。
血のように赤い紅葉が
印象深いその場所。
小さな女の子?
少女が一人
……泣いてる……。
君が、
迷い込んだから?
「……空間が歪んだ……。
咲。
ごめん……。
ボク……行かなきゃ」
揺れが収まったダイニングで、
咲に呟くように告げるとすぐに
玄関から神木の入口へと舞い上がった。
神木の前。
いつもなら、ふんわりと軽い足取りで
舞い降りることが出来るその場所に
今日は体制を崩して倒れ込む。
何故?
どうして?
こんなことは
初めてだよ。
痛みに耐えながら、
どうにかこうにか桜の神木の幹に
手を翳す。
回廊を渡って、体を引きずるように
人間界から狭間の世界へ。
鬼のボクを束縛する力?
桜鬼神たるボクが
動けなくなるなんて。
この力は何者?
住処まで体を支えながら、
必死に進んで桜鬼神としての
鬼狩の剣をゆっくりと握りしめる。
途端にボクを包んでいる
澱んだ【よどんだ】空気が
ゆっくりと澄みはじめる。
心臓の痛みも薄らいでいく。
その場で、
深く深呼吸を繰り返して
ボクは精神を集中させていく。