桜の木の下で-約束編ー
……風よ……
桜吹雪にのせて、
ボクを彼の地へ導いて。
風がボクの体を撫でた時
体は天に浮遊して
その場所へと誘われる。
辿り着いたのは、真っ赤な紅葉が
銃弾の様に敷き詰められた空間。
「そこにいるのは、
誰?」
ボクはその場所でしゃがみこんで
泣いている少女に話しかける。
「待ってるの。
私だけのあの人に
なってくれるのを……」
少女は顔もあげず、
相変わらずしゃがみこんだままで
言葉を紡ぎだす。
「待ってる?
誰の事を待ってるの?」
ボクが次の言葉を
紡いていく。
どうにかして人の世界に送り返せる
キーワードを見つけ出さないと。
そして、あの少女についている
鬼を狩りとる。
鬼の正体を知りたくて、
鬼狩の剣を天高く掲げる。
まばゆい光が
暗闇に光輝くものの
鬼の姿は映しだされない。
何故?
どうして?
この鬼狩の剣を通しても
映し出されないなんて。
ボクが姿を
捕えることが
出来ないなんて。
どうすればいい?
少女は相変わらず、
泣きじゃくっている。
ゆっくりと少女の元へ
近付いてボクは少女の方へ
ゆっくりと手を伸ばす。
「どうしたの?
君は誰を待ってるの?」
少女が顔をゆっくりとあげてにっこりと微笑む。
その少女の愛らしい顔に
惹かれる様にボクも微笑み返す。
その途端、体全体の力が
抜き取られるかのような
脱力感がボクに押し寄せる。
思わずバランスを崩して、
その場に膝をついてしまうボク。
少しずつ……意のままにならない体に
戸惑いながら目の前の少女を気に掛ける。
可愛らしい少女はゆっくりとボクに
近付いてきてボクに
にっこりと微笑みかけた。