桜の木の下で-約束編ー
「ご挨拶が遅くなりました。
徳力・秋月・生駒の神子様方に足をお運び頂いておりましたとは、
何事でございましょう。
当神社を任されています譲原咲久(ゆずりはら さくひさ)と
申します」
お祖父ちゃん?
その人たち……誰?
「咲、出てきなさい。
一緒に居るのは司君と一花君だね」
お祖父ちゃんの声が響いて、
私たち三人は、気まずそうに境内の影から身を出した。
視線が集中する。
「孫の咲とその知人です」
紹介されるままに私たち三人、
ペコリとお辞儀を続けた。
「三人とも、もう遅い。
家に帰って寝なさい」
そう促されると三人でお辞儀をして、
坂道を下り始めた。
夜の来客たちと共に、
お祖父ちゃんは神社で何かをしているみたいだった。
……和鬼、
何処に居るの?……
勾玉を握りしめて、
和鬼を想う。
その日も和鬼が
帰ってくることはなかった。