桜の木の下で-約束編ー
『ちくしょー。
審判審判って、
てめぇが偉いのかよ。
あれは、何様だよ。
俺らの大事なダチを
奪いやがって』
感情任せにボクに同意を求めるように
叫ぶ珠鬼の声。
悪気のない珠鬼のストレートな声は、
ボクに深く突き刺さった。
その刃は、
今も心の奥に突き刺さったまま。
ボクの心はその頃から
ゆっくりと凍りつき始めた。
孤独と向き合う時間の
始まりを告げた嵐の日。
その日から長き夜が訪れる。
*
体内に気は巡りだしたものの、
相変わらず、体に力は入らない。
何とか起き上った布団の上、
衣服の袖越しに、腕を見ると
昨日まではなかった、真っ黒い何かが
ボクの皮膚に侵食していた。
ボクをこの場所まで、
誘って連れ帰ってくれたらしい
桜の花弁に指先で触れながら
腕の闇を見つめる。
これは……あの少女、
紅葉と風鬼からの置き土産?
それとも……
ボクが恐れながらも求め続けていた
罰される時が近づいているのですか?
鬼の国主としての務めを放棄して、
ボクが人に想いを寄せたから?
桜鬼神としての務めを
利用して、
私利私欲のためにその力を使ったから?
恐る恐る、闇色の皮膚に触れるものの
痛みが走ることはない。
侵食するように、闇色に染まった腕を
衣服で隠すと、
今度は壁の力を借りながらベットから起き上がる。
*
帰らなきゃ。
ボクの帰る場所へ。
*
咲のことも気になってるんだ。