桜の木の下で-約束編ー
暗闇に向かって声をかけるものの
桜の花弁、一枚を残すだけで
そこに和鬼は存在しない。
あれ?
和鬼じゃないの?
和鬼も居ない……?
そんな不安は、
私の精神状態を一気に不安定にしていく。
*
私、いらない子なんだ。
*
寂しさと孤独に手足が悴んで【かじかんで】
冷たくなっていく気がする。
お母さん……。
離れていても、
ちゃんと覚えてくれてると思った。
新しい家族が居ても、
ちゃんと『咲』って呼んでくれると思ってた。
声に出さなくても、
口だけでも動かして呼んでくれたら
それだけで十分だったのに。
お母さんの新しい家族を
壊したいわけじゃなかったのに。
ただ一言。
私が望み続けた名前すら、
呼んでくれなかった。
デパートで出逢った
あの人の新しい家族を見て思った。
あの子は、私が知らないものを
沢山持ってるんだって。
私、あの子に嫉妬してた。
だからあの場所から
消えたかった。
あの場所に居続けるのは、
あまりにも孤独すぎて、私自身が惨めすぎて。
居たくなかったから逃げたいと願った。
そのまま見てたら、お母さんを罵倒して、
あの家族をぐちゃぐちゃにしてしまいそうだったから
その場から立ち去った。