桜の木の下で-約束編ー
和鬼が桜鬼。
そのことは誰も知らない。
それを知るのは任じた咲鬼の父である先王と、
あの最後の日、正体を知った咲鬼のみ。
今更に王と言う役割と、
桜鬼の役割を担った和鬼の重みを考えて、
何とも居たたまれなくなる。
……和鬼に逢いたい……。
あって、
和鬼を抱きしめたいよ。
今なら……もう少し、
和鬼のことがわかった気がするから。
「桜鬼のことについては、
私が見極めるまで、手出し無用。
わかった、珠鬼?
それより、
出掛けましょう。
和鬼を探さなきゃ」
珠鬼に微笑みながら話しかけると
珠鬼は再び、深く頭を垂れた。
……和鬼……。
ちゃんと、
貴方を見つけるよ。
この場所に来たのはびっくりしたけど、
この地は私を優しく、
迎え入れてくれたのかも知れないね。
あの瞬間、現在に居場所をなくしたと
感じた私に優しく手を差し伸べてくれたのかも知れないね。
この地は貴方が育った世界だから。
この地に来て私の知らない
貴方をもっともっと知りたいよ。
そして……今度こそ、見せて欲しいの。
和鬼の心からの笑顔を。
作り笑いじゃなくて、
心から微笑んでる楽しそうな和鬼を。
だから私は、
この場所で貴方を求め続けるよ。
私の知らない貴方を知る、
貴方の友人と旅をしながら。
だから……見つけて?
貴方の名を呼び突ける
私の手を捕まえて。
この広い鬼の世界で、
貴方の名を紡ぎ続けるから。
その手を取った瞬間から
私の鬼帰の時が始まっているなんて、
その時の私は何も知らないまま
この世界と深く関わりたいと望んだ。