桜の木の下で-約束編ー
「はい。
有難うございます。
YUKIさんでした」
鬼の歌に捕らわれた
女性司会者は慌てて、
我に返って自分の仕事を始める。
「ありがとうごさいました」
ボクは、
YUKIとしての
笑顔で微笑みかける。
番組は……進んでいく。
「さて。
それでは……
今週のランキングです」
ランキング発表が始まり
ボクの歌が
上位にランキングされると……
出演者から拍手が送られる。
静かに拍手を受け止めて
笑みをたずさえる。
ボクの変わらない仮初(いま)。
その仮初の優しさに
時折、溺れながら
ボクは今を歩き続ける。
-刹那の契り-
この思いを歌い綴りながら、
思い浮かべたのはボクが視えた少女・咲。
収録が終わった直後、
有香さんと別れ、
夜の闇に溶け込むように
ボクの住処へと帰って行く。
いつかは、
解き放たれる未来。
いつかは、
流れゆく未来。
その光は……
まだ届かない。