桜の木の下で-約束編ー



『桜鬼神。

 汝が闇に捕らわれるとは
 何事か。 

 己が判断力を欠き隠恋慕(かくれんぼ)に気づかぬとは
 人の世に降りて、それすらも忘れてしまったか』






隠す。

恋する。

慕う。






人が人として生きるために
必要な心。





隠恋慕。




かくれんぼ。














もういいかい













意識の奥深いところで、
何故か幼いボクが問いかける
言葉が微かに聞こえた。







今を生きるために、
咲への想いを隠したお母さん。






だけど、
それは忘れたことじゃない。


咲が必要ないわけじゃない。




そうしないと前に進めないから。



生きていくためには、
人はその心を隠してしまう。




ボクがあの日、
和鬼を隠して咲姫を人の世に見送った隠恋慕。




桜鬼のボクが咲に惹かれて救われて
今も想い続ける、隠恋慕。





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