桜の木の下で-約束編ー
『桜鬼神。
汝が闇に捕らわれるとは
何事か。
己が判断力を欠き隠恋慕(かくれんぼ)に気づかぬとは
人の世に降りて、それすらも忘れてしまったか』
隠す。
恋する。
慕う。
人が人として生きるために
必要な心。
隠恋慕。
かくれんぼ。
*
もういいかい
*
意識の奥深いところで、
何故か幼いボクが問いかける
言葉が微かに聞こえた。
今を生きるために、
咲への想いを隠したお母さん。
だけど、
それは忘れたことじゃない。
咲が必要ないわけじゃない。
そうしないと前に進めないから。
生きていくためには、
人はその心を隠してしまう。
ボクがあの日、
和鬼を隠して咲姫を人の世に見送った隠恋慕。
桜鬼のボクが咲に惹かれて救われて
今も想い続ける、隠恋慕。