桜の木の下で-約束編ー
そうか……。
ボクは今も想いつづけてるんだ。
和鬼としては咲姫を。
桜鬼としては咲を。
行かなくちゃ。
桜鬼としてボクは咲を守りに行きたい。
例え、その代償に
ボクの黒いものが再び
暴れだすとしても。
王族の務めを放棄して和鬼を葬った、
桜鬼としてのボク自身が
和鬼に焦がれ続けた、隠恋慕。
*
もういいよ
*
声にならない言葉で、
ゆっくりと答えた。
「桜鬼、何を企んでる?」
口の動きを見ていた神威と呼ばれている少年は、
キっと睨みつけてボクを言葉で絡めとった。
「桜鬼として。
ボクの地を守るものとして、
成すべきことを」
「アナタは?」
神威との会話をしていたボクたちの間を割り込むように
言葉を紡いできたのは、今の咲の母親。
ボクを浄化する蒼龍の力をボクの姿を視せてる?
窓が突然、蒼龍の力で割れて
家の中がめちゃくちゃになってる。
そんな無残になった家に戸惑いながら
お風呂から慌てて姿を見せた、
咲の母親の今の家族。
対峙するボクと、咲の母親を見守る
神威に飛翔と呼ばれていた青年。
背後では、柊と呼ばれていた女性が
蒼龍によって崩された世界をその力によって修復しようと
意識を集中していた。
少しずつ正常の状態へと時間が戻っていく建物。
ボクの来訪に寄って、
無残に壊れた咲の母親のテリトリーが修復されていくのを見届けて、
ボクは咲の母親をまっすぐに見据えて言葉を続けた。
「ボクの名は、桜鬼神(おうきしん)。
咲はボクが守ります」
何時になく力強く言い放つことが出来た言葉。