桜の木の下で-約束編ー
名前で……
温もりを運んでくれる。
いつも和鬼は、
私を私として受け止めてくれた。
見つめてくれた。
抱きとめてくれた。
一人ぼっちで泣き叫ぶ私の心を
一番近くで、見守ってくれた。
……和鬼……。
逢いたいよ……。
孤独の冷たさに、
心が凍り付いてしまう前に。
ふと私の前に現れる黒い渦。
「誰?」
慌てて布団から飛び起きて、
黒い渦の中を見つめる。
『誰?
さぁ、どなたかしら?』
聴き覚えのある声と一緒に
姿を見せたその人は、依子先輩。
「依子……先輩……。
どうして」
依子先輩はまっすぐに
黒い渦の中から私の方へと歩いてくる。
黒い渦が私の周囲を包み込んでいくと共に
体が痺れるように
思い通りにならなくなっていく。
「咲、消えてちょうだい。
YUKIは私だけのYUKI。
貴女は目障りなのよ」
先輩は微笑みながら、
その白い両手をゆっくりと私の首元へと回していく。