桜の木の下で-約束編ー
11.風の声 -和鬼-
*
和鬼、私は此処に居る。
和鬼 迎えに来て
……助けて。
私が壊れる前に。
*
何度も何度もボクの心に
流れ込んでくる咲の切なる想い。
咲が呼んでる……。
咲の母親に、ボクの名を告げて
鏡を伝い、神木の回廊へと渡る。
その道すがら、
顕現する三体の神々しい光。
『桜鬼よ……汝の未来は少ない。
汝の望みし、審判の時は近い』
光の中から、言葉を放つのは
ボクを何度も助けてくれた蒼龍。
龍の位を抱く神。
その神の想いは、神に名を連ねる末端にまで
優しさ・強さ・慈しみが染みわたっていく。
普段、簡単にその姿を見ることの叶わぬ
その神たちがボクの前に姿を見せた。
それはボク自身の浄化の時間が
近づいていくことも自覚させてくれた。
『蒼龍、炎龍、雷龍。
その御心に感謝します』
神々しい光に向かって、
ボクは膝を折って頭を垂れる。
神が教えてくれたボクの終焉【おわり】。
ボクがボクで居られる残りの時間。
それはボク自身が知りたかったこと。
『桜鬼よ……私の愛子よ。
汝【なれ】に、我が守護を授けよう。
汝の命が尽きるその日まで』