桜の木の下で-約束編ー
「和鬼……」
和鬼の体には、
矢が一本突き刺さっていて、
その傷口からは、
紅い血が滲み出ている。
「和鬼……!!」
心が求めて名を紡いだ瞬間、
再び、流れ込んでくる真っ黒な霧。
『殺せと紡ぎつづける声』
その二つに意識が
呑み込まれそうになる間際、
私を不安そうに見つめる
和鬼に……コクなお願いをする。
「和鬼……。
私をコロシテ」
霧に閉ざされる間際、
最後に見た和鬼の目からは
涙が溢れだしていた、そんな気がした。
ごめんなさい。
和鬼。
これじゃ、
咲鬼姫と私も同じだね。
アナタを一人にして、
アナタを苦しめて。
だけど……アナタにしか、
託せる相手は居ないの。
私が想う
信頼できる存在は
アナタだけだから……。
だから……。
アナタの心も、
アナタの想いも
全て抱きしめるから
私の願いを叶えて……。
今も木霊し続ける
『殺せ』と言う指令の声に
贖うように、
彼の姿と心の中に描き続けた。