桜の木の下で-約束編ー
13.闇に散りけり -和鬼-
『コロシテ……』
ボクが抱く腕の中、
咲は小さく呟いた。
何度も涙を流しながら繰り返される言葉に、
ボクの体力も精神力も吸い取られていくみたいで、
重怠くなっていく体を支える術もなく、
咲の言葉だけと向き合っていた。
咲、キミもボクに
その罪を負わせるの?
決して自身で許すことが出来ない
大きな罪を。
……そう……。
それが君の望みなんだね。
それが咲の望みなら、
ボクはそれを受け止めるよ。
ボクの心と引き換えに、
君を救えるのなら……。
遠い昔、和鬼がそれを選んで
ボクに求めたように。
ボクの心が闇に砕けるのと引き換えに
咲を守ることが出来るなら、
ボクの疎まれ、嫌われ続けたこの力も
意味があるのかもしれないね。
最後の最後でボクも誰かの役に立つことが出来るって
思っていいんだね。
……咲……。
それが君がくれた、ボクの最後の存在意義なら、
ボクはこの心と引き換えに君を守るよ。
ボクが闇に砕けた後も、
ボクのことで苦しまないように
全ての記憶を閉ざして。
桜鬼である最後の務めを君の為に。
それが君の……ボクが愛した
最愛の女性【ひと】の望みだから。