桜の木の下で-約束編ー
15.風の記憶 -和鬼-
『私をコロシテ』
咲の切なる願いに逆らえず、
自らの鬼狩の剣を、咲の体内へと突き刺した。
皮膚を貫き、
肉を断つ感触がボクに押し寄せる。
その感触を理解した途端、
ボクの中のもう一つの大切な何かが
崩れるように墜ちて行った。
遠ざかりそうになる
ボク自身の意識にあがなう様に、
咲を必死に抱きしめながら、
唇を噛みしめて見つめる。
今のボクを守護するのは、
蒼龍の加護。
蒼龍の庇護を受けるボクの気には、
神気が混ざる。
最初で最後のかけ。
神気を宿した
鬼狩の剣で最愛の咲を突き刺す。
失敗すれば咲は息絶え、
成功すれば……、その鬼狩が引き金となって
龍神の加護を受けられれば、
咲は助けられるかもしれない。
「和鬼、お前」
咲と二人、いろんな場所に移りながら
向かい合い続けた。
そしてこの場所にようやく辿り着いた珠鬼は
今の現状を見つめて小さく呟いた。
「珠鬼……大丈夫だよ。
ボクにはもう桜鬼神として存在できる力は残ってないから」
咲を見つめながらゆっくりと紡いだボクに
珠鬼は深刻な顔をしながら近づいた。
「和鬼、まさか」
珠鬼はボクに駆け寄って、
躊躇う【ためらう】ことなくボクの袖をめくっていく。
肌が黒ずんで闇色に染まり続けるボクの体。