桜の木の下で-約束編ー
*
「和鬼っ。
和鬼っ!!」
次に意識を回復した時、
ボクは見慣れないへ部屋で目覚めた。
ボクの目の前には、
秘石の力を使い続ける珠鬼の姿が目に入る。
「……珠鬼……」
床【とこ】に臥せた【ふせた】ままで、
静かに名前を紡ぐ。
珠鬼の顔は青白く、ボクを治療する秘石の力を操るため、
自らも無理し続けているのが感じとれた。
「もういいよ、珠鬼。
ボクよりも、君も休まないと」
今もボクに翳し続ける、
その掌をゆっくりと制した。
「有難う。
随分と楽になってるから。
咲は?」
そう気になるのは咲の存在。
彼女の未来が
この先も繋がってくれれば
ボクは……もう……。
「姫さまは大丈夫だよ。
もう床から起きてる。
和鬼が守ったんだろう。
俺は秘石を握らせていただけだよ。
姫さまも逢いたがってる。
呼んでくるよ」
そう言った珠鬼の言葉に、
ボクもゆっくりと床から起き上がる。
ボクの体を蝕む闇は、
今も消えることはない。
だけど、その痛みは今はない。