桜の木の下で-約束編ー









「和鬼っ。
 和鬼っ!!」



次に意識を回復した時、
ボクは見慣れないへ部屋で目覚めた。



ボクの目の前には、
秘石の力を使い続ける珠鬼の姿が目に入る。




「……珠鬼……」



床【とこ】に臥せた【ふせた】ままで、
静かに名前を紡ぐ。



珠鬼の顔は青白く、ボクを治療する秘石の力を操るため、
自らも無理し続けているのが感じとれた。



「もういいよ、珠鬼。

 ボクよりも、君も休まないと」



今もボクに翳し続ける、
その掌をゆっくりと制した。




「有難う。
随分と楽になってるから。

 咲は?」



そう気になるのは咲の存在。





彼女の未来が
この先も繋がってくれれば
ボクは……もう……。







「姫さまは大丈夫だよ。
 もう床から起きてる。

 和鬼が守ったんだろう。

 俺は秘石を握らせていただけだよ。

 姫さまも逢いたがってる。
 呼んでくるよ」





そう言った珠鬼の言葉に、
ボクもゆっくりと床から起き上がる。





ボクの体を蝕む闇は、
今も消えることはない。



だけど、その痛みは今はない。



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