桜の木の下で-約束編ー
『和鬼……。
俺と同じように闇に蝕まれて自らを制御できず、
苦しみ続ける同胞たちの魂を守ってやってくれ。
俺たちは殺されるんじゃない。
抱かれに行くんだ。
国主と桜鬼神。
沙羅双樹の大木に導かれて楽園に旅立つんだから』
★
……風鬼……。
映し出される景色に、
紅葉は静かに涙を流した。
*
我名は和鬼。
国主と桜鬼神、双樹を継ぐ者。
我民の安寧を厭い【いとい】その旅立ちを誘う。
……紅葉……。
汝が旅立ちを祝福しよう。
親友の元へ
*
桜吹雪に誘われて、桜鬼の奏でる琴の音に
意識を委ね国主が謡う揺りかご。
二つの双樹に抱かれて。
紅葉を腕に抱いて、
ゆっくりと旅立ちを見送ると
ボクは穏やかな笑みを携えながら、
ゆっくりと崩れ落ちた。
……咲……幸せに……。