桜の木の下で-約束編ー
先導し続けていた金色の鳥が
ゆっくりと空を旋回する。
旋回する下では、和鬼が紅葉を抱くように
鬼狩の剣を突き刺していた。
「和鬼っ!!」
近づこうとする私に、
桜吹雪が邪魔をする。
桜吹雪が舞い踊る中、
和鬼は何かを紡ぎ、
琴を奏でて何かを歌っていた。
その姿は……何処か神秘的で、
幻想的で……私は見惚れるように、
その中で立ち尽くした。
紅葉が桜吹雪と共に
この地上から姿を消すと
和鬼はゆっくりと振り返って、
にこやかに微笑んだ。
そのまま崩れておちた和鬼の体。
*
膝枕をしながら和鬼を抱く私の元に
一枚だけ残されたの桜の花弁。
「和鬼っ。
嫌、目を覚まして」
和鬼の体を揺すり起こした私の視界に、
初めて映し出された、和鬼の体。
袖をめくって和鬼の肌の色を
見つめながら驚きが隠せない。
珠鬼は、
人と同じ肌の色をしてた。
和鬼も同じだった。
あの前に鬼の世界から戻って、
本当の意味で契りの変わりに体を重ねた夜。
あの日見た和鬼は
透き通った雪のような肌だった。
なのに今目の前に広がる
和鬼の腕の肌色は、
真っ黒な闇が広がっていた。