桜の木の下で-約束編ー
「和鬼?」
慌てて和鬼が
身に着ける衣をめくっていく。
和鬼の肌は得体の知れない
真っ黒な闇に侵されていた。
どれだけ和鬼の名を呼んでも、
その瞳が開くことはない。
ただ満足そうに、
穏やかに微笑む
和鬼がそこにあるだけだった。
「和鬼、どうして?」
それしか言葉は出てこない。
和鬼を抱きしめて、
ただ泣き事を零し続ける。
そんな私の前に現れたのは、
闇の世界で出逢った神たち。
人の形を模した龍神たちは、
和鬼を見下ろしながら、
ゆっくりと紡いだ。
『旅立つのか……桜鬼神……』
優しい眼差しで、
和鬼を見つめる神々。
その声に和鬼の瞳は
導かれるように再び開かれる。
「……和鬼っ……」
力強く和鬼を抱きとめる
私に和鬼はまた嬉しそうに笑いかけた。